8日目その2
その1の続き
手洗いを済ませ滅菌ガウンとグローブを着用すると、いよいよ手術が始まりました。
アシスト内容は吸引管で血や水を吸い取るサクションと、筋鈎で口を開いておく係です。
口腔内で行う手術では、口から術野を覗き込むと同時にあらゆる器具を挿入して作業を行わなければいけません。
また、切開を伴う手術の場合はどうしても出血を免れないのでそのままだと術野が血で隠れてしまいます。
骨削や歯の切削を伴う場合は注水を行うため、口の中にどんどん水が溜まっていきます。
そこで術野を明視野に保つと同時に患者が水で溺れないようにするため、口腔外科手術ではサクションによる吸引と筋鈎による術野の確保が極めて重要なんです。
そんな重要な役割を与えられて緊張間に押し潰されそうになっていましたが、Dr. Matsの的確な指示もありなんとかこなすことができました。
何より、指示されたところをちゃんと吸えた時のPerfekt!がすごく嬉しかったです。
手術が終わると後片付けをしながらDr. Matsが今回のアシストについて感想を言ってくれました。
Dr. Mats「インプラント埋入とサイナスリフトは日本でも見たことあるのかね?」
Mutans 「サイナスリフトは初めてです。アシストはもちろん、見たこともありません」
Dr. Mats「君のアシストは初めてにしては非常に良かった。きっと良い口腔外科医になるよ」
Mutans「ありがとうございます!」
こうして無事アシストすることができ、手術は終了です。
次は外来に行くことになりました。
外来では口蓋裂で口蓋閉鎖術を行った少年の術後経過観察がありました。
まだ傷口から血が滲んでいる状況です。
お母さんに傷口を清潔に保つための歯ブラシの使い方を説明していました。
途中でDr. Matsが急用で呼び出されたため、私とアシスタントの先生と患児、保護者の4人で外来処置室に残されました。
幸いお母さんは英語を話せる人だったので、気まずい沈黙はありませんでしたが、どうしても手持ち無沙汰だったので、ここはひとつ日本人らしいことをしようと画策。
処置室の要らない紙をもらって正方形に切り、準備完了です。
そう、日本人といえば折り紙ですね。
そして病人には折り鶴と相場は決まっています。
紙を折る手元を興味深げに眺める少年の横で作業すること数分、折り鶴が完成しました。
「これは鶴。日本では幸運の鳥とされていて、日本人は病気や怪我が早く治るようにと願いを込めて鶴を折るんだよ」
と伝え(お母さんに通訳してもらいながら)、少年に手渡すととても喜んでくれました。
その後キツネを折ってとかワニを作ってくれとせがまれましたが、できないと断るのが心苦しかったです。
少年よ、折り紙名人でもない限り日本人は鶴くらいしか折れないんだよ。
その後戻ってきて鶴を見たDr. Matsから本日何度目になるか分からないPerfekt!をいただき、少年を病室に見送って今日の午前は終了です。
手術のアシストだけでなく患者とも触れ合うことができて、今日は最高の経験ができました。
こっちでの生活は毎日充実していてとても幸せです。
8日目その3へ続く