10日目
スウェーデンに来て2度目の週末。
午前中はbuddy達と屋外スケートリンクへ行き、20年ぶりのスケートに挑戦しました。
立ってるだけで脚が疲れること疲れること。
おまけに何度も転んで尻は痛いし、体中ボロボロです。
けどこっちへ来てなかなか体を動かす機会がなかったので、久しぶりに運動することができて良い気分でした。
こっちではスケートはメジャーなスポーツらしく、同行したbuddyの上手さに驚きました。
オリンピックで見るような姿勢で氷の上をスイスイ滑っていきます。
スケートリンクではアイスホッケーの練習をしている学生達もいました。
その脇でこそこそ練習していましたが、足が限界に近づいてきたので一旦休憩することに。
ホットチョコレートを飲みながら話していると、アイスホッケー集団も練習を切り上げたようです。
日本から一緒に来た相方と話していると、アイスホッケー集団の中にいたアジア人が話しかけてきました。
日本語で。
まさに
こんなところに日本人!
彼とはまた翌日会うことになるんですが、詳しくは明日の日記で。
スケートから帰ってきて一息つくと、今度は別の用事があります。
ウメオ大の教授達から、日本の先生達と一緒にディナーに招待されました。
普段は日本から持参したレトルト食品やスーパーの惣菜で食いつないでいたので、こっちに来て初めて食べるちゃんとしたスウェーデン料理です。
テーブルセット
席に着いたらとりあえずビールで乾杯。
このお洒落なテーブルがいかにも北欧にいる気分にさせてくれます。
前菜:Skagen
エビと野菜のぶつ切りをマヨネーズ風のソースで和えたものが固いパンの上に乗っています。
具はカクテルシュリンプ的なイメージ。
味付けはしっかりしていて、前菜ながら食べ応えのある料理でした。
エビ好きにはたまらない!
魚介料理ということで、レストランおすすめの白ワインと一緒にいただきました。
メイン:トナカイのステーキ ポテトフライ添え
生まれて初めてトナカイを食べました。
味は北海道でたまに食べるエゾシカ肉にかなり近いです。
豚や鶏と異なり赤身部分に肉の旨味がしっかり存在しているにも関わらず、牛や羊のような臭みがない、あっさりして優しい味の肉です。
鹿肉との違いは肉質が柔らかく全く筋張っていない点でしょうか。
肉の部位による違いもあるとは思いますが、鹿肉よりは野生味が薄いといったイメージです。
サイドメニューはポテトフライ、マッシュポテト、ポテトグラタン、温野菜、サラダから好きなものを選べました。
私は手軽につまめるポテトフライを選択。
普通のポテトフライでも雰囲気のある店で食べるとより美味しく感じます。
肉料理なので、これまたレストランおすすめの赤ワインと一緒にいただきました。
デザート:バニラアイス クラウドベリージャム添え
クラウドベリーは北欧特産の果物です。
食感はラズベリーに近く、味は説明しづらい感じ。
果物の味そのものが美味しいというよりは、一緒に食べるスイーツの甘さを和らげてくれる名脇役的ポジションです。
メニューにはチョコレートケーキとクラウドベリーのセットかバニラアイス単品しかありませんでしたが、チョコレートが苦手なのでメニューを少し変えてもらいました。
なお、この選択は完全なる正解でした。
デザート皿の左上に写っているのはクラウドベリーのリキュール。
驚いたことに、この国ではデザートと一緒に酒を飲むんですね。
このリキュールが半端じゃなくアルコールが強く、最後の最後で程よく酔っ払えました。
メニュー写真
せっかくなのでメニュー写真も撮っておきました。
自分の食べた料理の値段を見てビックリ。
飲んだ酒の分も足すと、日本円換算でほぼ諭吉さん一人分。
北欧の物価の高さを思い知りました。
これ一人じゃ絶対に来れないレベルの店ですよね。
招待してくれた教授達に心から感謝です。
お腹もいっぱいになってたっぷり栄養補給したところで、11日目へ続く。
9日目
今日の時間割は
AM: Free
PM: Special Lecture
でした。
午前は休みだったので、溜まっていた洗濯物を片付けたり部屋の掃除をして過ごしました。
午後は日本から来た二人の先生による特別講義です。
私達留学生がちゃんと勉強しているか日本からはるばる監視に来るついでにちょっとした講義をやっていきました。
久しぶりに敬語で話すと変な感じがしました。
毎日英語で過ごしていると、たった9日間でも日本語を話すのに違和感を感じます。
講義の内容は我らが北大の紹介および「FactとTruthの違い」について。
なかなか興味深い内容でした。
こっちの先生達も満足した様子です。
そしてこの後。
buddy programによる留学生の交流イベントで、international pubなる飲み会が開催されました。
一次会はbuddyの家で軽くホームパーティ。
スウェーデン人のみならず、アゼルバイジャン人🇦🇿とイタリア人🇮🇹とルーマニア人🇷🇴と仲良くなりました。
スウェーデンの歯学生とも一緒だったので、普段クリニックで話さないようなことも話して盛り上がったり
ただ、途中から患者への接し方や治療に対する姿勢について熱く議論を交わしてしまいました。
周りを置いてきぼりにしてしまって少し反省。
このディスカッションの内容はその内別記事にまとめます。
二次会は市街地中心部にあるクラブをまるごと貸し切ってのパーティです。
人がすごく多くて若干収集つかない感もありましたが、みんなで飲んで歌って踊って、と異国の空気をしっかり楽しんできました。
一人晩酌もいいけど、やはりみんなで飲む酒は格別に美味いですね。
今日はガンガン飲んだのであまり記憶がはっきりしないため、日記の内容も薄くなってしまいます。
とりあえず財布も携帯もパスポートも失くさず持って帰ってきたのでOK。
今日も楽しい一日でした。
8日目その3
午後はEndodontics(歯内療法学)の実習でした。
この実習では患者の治療は行わず、ファントムモデルによる模型実習です。
Danという学生と仲良くなったため、彼の実習を見学することにしました。
左上6人工歯の歯内療法です。
こっちの実習ではまず最初にファントム模型のX線写真を撮影して、根管の形態を確認してから削り始めます。
実習はstudent clinicのユニットを使用して行われますが、同じ診療室内にデンタル撮影ができるX線撮影室があるので、いつでも気軽に撮影して進捗状況を確認することができます。
そしてもう一つ気づいたことが。
ここではラバーダム装着時にヤングのフレームを使用せず、プラスチックのかっこいいフレームを使います。
↑これが
↑こうなる。
ラバーダム装着、消毒を済ませた後髄腔開拡に入ります。
髄腔開拡の後、DanはMB根の根管口を発見できたものの、DB根とP根を見つけられず私に助けを求めてきました。
メモ帳に図を書いて、根の方向を思い浮かべて3次元的な位置関係を把握するようにアドバイスしましたが、ピンと来ない様子。
終いには日本の技術が見たいなどと言い始め、代わりに開けてくれと頼んできました。
実際の患者ではないし問題ないだろうと誘いに乗ってみましたが、実は内心ちょっと不安でした。
外来を離れて3ヶ月、もしかしたら手技を忘れているんじゃないかと心配するには十分な期間です。
しかしそんな不安を悟られないよう振舞いながら、根管口の探索を始めました。
mutans「根の形と位置関係はイメージできるよね?闇雲に掘るんじゃなくて正しい方向を考えてやらなきゃいけないよ」
Dan「ふむふむ」
mutans「例えばDB根は頬側に向かうと同時に遠心にも傾斜しているから、近心舌側から覗いてみると見つけやすいはずだよ」
Dan「なるほどね」
mutans「この角度でこの辺を削ってみると…ほらMB根発見」
Dan「ワオ!!」
mutans「P根は横でアドバイスするから挑戦してみて」
Dan「No!Japanese techniqueで終わらせちゃって!」
mutans「楽しいからいいけど実習的に問題ないのかなぁ。まぁやってみるよ。P根は口蓋側に向かってるから、頬側からやや遠心に向かって探索すれば…ほら見つけた」
Dan「すごく早いな!マジ感謝!あのままじゃ先に進めなかったよ」
という感じで一丁前に指導しながら無事根管へのアクセスに成功。
ちょっとだけドヤ顔になっていたかもしれませんが、内心はヒヤヒヤでした。
その後は根管の長さを測って、X線で確認して、抜髄を想定した根管形成をやって終わりでした。
正直恥かかずに済んで良かったなと思います。
放課後はIKEAへ行ってミートボールを食べました。
美味しかったので冷凍ミートボールを1kgも買ってしまいました。
ちゃんと全部食べきれるかな?
9日目へ続く
8日目その2
その1の続き
手洗いを済ませ滅菌ガウンとグローブを着用すると、いよいよ手術が始まりました。
アシスト内容は吸引管で血や水を吸い取るサクションと、筋鈎で口を開いておく係です。
口腔内で行う手術では、口から術野を覗き込むと同時にあらゆる器具を挿入して作業を行わなければいけません。
また、切開を伴う手術の場合はどうしても出血を免れないのでそのままだと術野が血で隠れてしまいます。
骨削や歯の切削を伴う場合は注水を行うため、口の中にどんどん水が溜まっていきます。
そこで術野を明視野に保つと同時に患者が水で溺れないようにするため、口腔外科手術ではサクションによる吸引と筋鈎による術野の確保が極めて重要なんです。
そんな重要な役割を与えられて緊張間に押し潰されそうになっていましたが、Dr. Matsの的確な指示もありなんとかこなすことができました。
何より、指示されたところをちゃんと吸えた時のPerfekt!がすごく嬉しかったです。
手術が終わると後片付けをしながらDr. Matsが今回のアシストについて感想を言ってくれました。
Dr. Mats「インプラント埋入とサイナスリフトは日本でも見たことあるのかね?」
Mutans 「サイナスリフトは初めてです。アシストはもちろん、見たこともありません」
Dr. Mats「君のアシストは初めてにしては非常に良かった。きっと良い口腔外科医になるよ」
Mutans「ありがとうございます!」
こうして無事アシストすることができ、手術は終了です。
次は外来に行くことになりました。
外来では口蓋裂で口蓋閉鎖術を行った少年の術後経過観察がありました。
まだ傷口から血が滲んでいる状況です。
お母さんに傷口を清潔に保つための歯ブラシの使い方を説明していました。
途中でDr. Matsが急用で呼び出されたため、私とアシスタントの先生と患児、保護者の4人で外来処置室に残されました。
幸いお母さんは英語を話せる人だったので、気まずい沈黙はありませんでしたが、どうしても手持ち無沙汰だったので、ここはひとつ日本人らしいことをしようと画策。
処置室の要らない紙をもらって正方形に切り、準備完了です。
そう、日本人といえば折り紙ですね。
そして病人には折り鶴と相場は決まっています。
紙を折る手元を興味深げに眺める少年の横で作業すること数分、折り鶴が完成しました。
「これは鶴。日本では幸運の鳥とされていて、日本人は病気や怪我が早く治るようにと願いを込めて鶴を折るんだよ」
と伝え(お母さんに通訳してもらいながら)、少年に手渡すととても喜んでくれました。
その後キツネを折ってとかワニを作ってくれとせがまれましたが、できないと断るのが心苦しかったです。
少年よ、折り紙名人でもない限り日本人は鶴くらいしか折れないんだよ。
その後戻ってきて鶴を見たDr. Matsから本日何度目になるか分からないPerfekt!をいただき、少年を病室に見送って今日の午前は終了です。
手術のアシストだけでなく患者とも触れ合うことができて、今日は最高の経験ができました。
こっちでの生活は毎日充実していてとても幸せです。
8日目その3へ続く
8日目その1
午前は特別メニューのspecialist clinic for oral surgery見学でした。
朝Oral surgeryの医局へ行くとみんな歓迎してくれて、コーヒーを振舞ってくれました。
student clinicは控え室らしい部屋もなくいかにも実習という空気だったのに対して、さすがはスペシャリスト。
余裕と風格すら漂っています。
そして先生達が集まると、全員の前で簡単な自己紹介をしました。
拙いスウェーデン語でなんとか自己紹介をすると、拍手喝采でなんだか嬉し恥ずかしかったです。
今日指導してくれるのはDr. Mats。口腔外科の教授で、Perfekt!が口癖のナイスガイです。
Dr. Matsは2件の手術を執刀する予定でした。
1例目は根尖切除術。
ガンの治療中の患者で難治性の根尖病巣があり、病巣感染予防の観点から病変を完全に取り去ることが必要と診断されたとのことです。
ところが抗癌剤使用による骨髄抑制が予想より強く出てしまったらしく、感染リスクが高いとの理由でこの手術はキャンセルになってしまいました。
2例目は上顎大臼歯部インプラント埋入術。
右上6にインプラントを埋入する小手術です。
手術まで1時間ほど時間があったので、2例目のインプラント手術に関してX線とCT画像を見ながら説明を受けました。
CTで確認すると、埋入部位の歯槽骨頂から上顎洞底まで5mmしかない症例です。
この件について意見を求められました。
Dr. Mats : It about 5 millimeters only. What do you think?
(高さが5mmしかないけど、どう思う?)
Mutans : Not enough.
(足りないと思います)
Dr. Mats : Then what should I do?
(ではどうすればいいと思うかね?)
Mutans : Well, it seems to need a sinus lift.
(上顎洞底挙上術が必要だと思われます)
Dr. Mats : Perfekt!
(Perfekt!)
内心ヒヤヒヤしながら答えたところ、無事Perfektいただきました。
そしてDr. Matsの口から思いもよらぬ言葉が。
「今日は君に手術のアシストに入ってもらおうこと思うんだが問題ないね?」
えぇ〜!?
問題ないけどアシストってあのアシストだよね?
マジかよ緊張してきたぞ…
と戸惑いながらもYesと答えると、
Perfekt!
インプラント埋入だけなら日本で見学したことがあります。
しかしサイナスリフトは見たことがありません。
しかも今回は見るだけでなくアシストまで。
その上ここは慣れ親しんだ北大病院ではなく、スウェーデンのNorrlands universitetssjukhuです。
プレッシャーが半端じゃありません。
ウメオに来て一番緊張した瞬間です。
内心これ大丈夫なのかなと思いながらも何食わぬ顔で患者を手術室に迎え入れ、手洗いをしに行くのでした。
8日目その2へ続く
student clinicとspecialist clinic
ウメオ大学での病院見学実習はstudent clinicを中心に行われています。
student clinicは学生専用の診療室で、先生によるチェックはあるものの初診から治療計画、実際の治療や保健指導に至るまで全て学生の手によって行われます。
私が参加したのは7th semester=4年生の実習グループで、彼らの担当する診療科は
1.Cariology…齲蝕学。日本の保存修復学に近いが、予防の進んでいるスウェーデンでは予防歯科学も含む。
2.Endodontics…歯内療法学。見学した日は患者ではなくファントム模型実習。
3.Periodontology…歯周病学。ほとんど検査やSRPなど歯周基本治療。
4.Prosthodontics…歯科補綴学。冠橋義歯が主流。有床義歯は見かけない。
5.Oral physiology…顎関節症治療。日本とほぼ変わらずスプリント治療が基本。
の5つあるようです。
歯科の基本となる修復、歯周病、補綴と顎関節症に対する臨床経験を積むことを目的としてこのような構成になっています。
student clinicでは割安で歯科治療を受けられることもあり、多くの患者が来院するようです。
北大では学生に患者が配当されることがなく、患者を担当するためには自ら自験症例を呼ばなければいけないのに比べると遥かに良い環境であると言えます。
友人や家族がみんな虫歯のない人ばかりで、自験症例を呼べなかった身としては羨ましい限りです。
一方口腔外科や矯正、小児などより高度な技術が求められる診療科に関してはstudent clinicではなくspecialist clinicにて各分野の専門医によって診療が行われています。
確認できた限りでは口腔外科、口腔診断科、矯正歯科、小児歯科、障害者歯科、高齢者歯科、歯科放射線科がありました。
この辺りの構成は日本とあまり変わらないようですね。
興味深いのは顎関節症の治療がstudent clinicで行われていることです。
顎関節症は咬合異常の他にストレスや中枢性のものなど様々な要因で引き起こされるとされている複雑な疾患です。
北大ではまさにspecialistの管轄といった扱いですが、そんな顎関節症をも学生が治療するというのは不思議な感覚でした。
まとめると、
student clinic…歯科の一般臨床を学生が練習するための学びの場。患者は格安で治療を受けられるメリットがある。
specialist clinic…一般開業医では持て余すような高度な治療を行う場。各分野の専門家がいるため、患者は質の高い治療を受けることができる。
こんな感じでしょうか。
7日目
留学を始めてちょうど1週間になりました。
変わらず元気でやってます。
今日の時間割は
AM: Cariology
PM: Free
です!
午前中のCariologyではCR充填を見学しました。
基本的な器具は一緒ですが、見慣れないメーカーばかりで別世界にいる気分です。
あと稀に見たことない器具が出てきたりして、その度に質問するのが楽しみになってきました。
実習を見学した感想を正直に言うと、案外それほど上手じゃないんだなといった感じです。
もちろん個人差もあるでしょうし、決してバカにしているわけではないのですが、
student clinicで患者を何人も担当して、これまでも診療経験を積んできた割には手元が覚束ない学生が多いことに驚きです。
あとは先生チェックに時間がかかるせいで、診療時間がとんでもないことになっています。
今日見学した患者の治療内容は、左上4番歯頸部の修復物が不適合のため除去の後にCR再充填でした。
軟象除去もなければ印象採得もないし30分もあれば終わりそうなものの、実際かかったのはなんと3時間。
時間がかかる分作業が丁寧なのかもしれないですが、余程時間のある患者でなければstudent clinicに通うのは難しいだろうなと思いました。
午前中の長い見学を終えた後はbuddy達と市内の中心部へと繰り出しました。
ショッピングセンターの中の雑貨屋や手作りの土産を売っている店で商品を眺めながらぶらつきました。
家族への土産にトナカイの角製グリップのチーズナイフを購入。
きれいに包装してくれたので商品の写真はありません!
もちろんsystembollagetに寄るのも忘れてません。
前に買った7本の中にお気に入りがあったのでちゃんと買い溜めておきました。
明日は一昨年度うちの大学に来ていた交換留学生と一緒にランチの予定です。
会うのはほぼ2年ぶりでしょうか。
そして明日の予定でもう一つ特筆すべきものが。
なんと明日はstudent clinicではなくspecialist clinicの見学をさせてもらえることになったんです!
ついにスウェーデンの本気を見ることができるかと思うと今から楽しみで待ちきれません。
さあ明日も頑張るぞ!